研究課題
植物特有のオルガネラである葉緑体とミトコンドリアで働くペンタトリコペプチドリピート(PPR)タンパク質の機能を解明し、PPRタンパク質を介したオルガネラの転写後制御(RNA編集など)の分子機構を明らかにする。今年度得られた主要な成果は次の通りである。(1) 葉緑体のRNA編集にDYWドメインをもつPPRタンパク質(PPR-DYWタンパク質)がトランス因子として働くことが知られていたが、ミトコンドリアのRNA編集にもPPR-DYWタンパク質が関与しているかは不明であった。そこで、PPR-DYWタンパク質であるミトコンドリア局在型PpPPR_56, PpPPR_77, PpPPR_91をコードする遺伝子を相同組み換えによりノックアウトした変異株を作製し、そのRNA編集について解析した。その結果、PpPPR_56とPpPPR_77は11カ所のRNA編集部位のうち4カ所の編集部位に、PpPPR_91は1カ所の編集部位に働くことを明らかにした。(2) ミトコンドリア局在型PpPPR_43をコードする遺伝子を相同組み換えにより遺伝子破壊株を作製した。PpPPR_43遺伝子破壊株ではミトコンドリアのRNA編集が正常に起っていたので、RNA編集以外の転写後プロセスについて解析した。その結果、coxI遺伝子の第3イントロンのスプライシングがほとんど起こっていないことを見いだした。PPR-DYWタンパク質がRNA編集だけでなく、RNAスプライシングにも関与する可能性を初めて示した重要な成果である。
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