研究課題
花粉壁外層はエキシンと呼ばれ、脂質とフェノール化合物を主成分としたポリマー(スポロポレニン)から成ると提唱されているが、詳細な構造は不明である。代表者は、シロイヌナズナ転写因子MS1遺伝子の突然変異体(雄性不稔形質を示す)を用いた解析から、エキシン形成に関与することが示唆される脂質とフェノール化合物の生合成・代謝系酵素遺伝子群のホモローグを同定している。本研究課題では、新規のスポロポレニン生合成遺伝子群を明らかにしてそのポリマー構造を推定するために、候補遺伝子群のうち、3-ketoacyl-CoA合成酵素(KCS)および、BAHDアシル基転移酵素に注目し、シロイヌナズナのT-DNAおよびトランスポゾン挿入変異体の作製を行い、花粉粒の表現型解析を行った。3つのKCS遺伝子パラログの三重変異体は、葯発達表現型異常が観察されなかった。また、ヒドロキシシナモン酸とスペルミジンとのアミド化酵素である、BAHDアシル基転移酵素遺伝子の破壊変異体は、花粉コート内のヒドロキシシナモイルスペルミジンの消失が観察されたが、花粉致死形質を示さなかった。さらに、これら遺伝子の四重変異体は、ms1突然変異体のような花粉形成阻害の表現型は示さなかったが、微細なエキシンの異常は認められた。以上の解析から、これら遺伝子群のエキシン形成への関与が示唆されたが、MS1遺伝子制御下の別の遺伝子がエキシン形成に関与していることも明らかになった。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Plant Journal
巻: 64 ページ: 657-667
