研究概要 |
本年度重点的に行った研究は、まず昨年度から行ってきたAHG1,AHG3をはじめとするABA関連PP2Cと、ABAにより活性化されるSnRK2,SRK2D,SRK2E,SRK2Iの関連の分子レベルでの解析である。まず、SnRK2とABA関連PP2C間の物理的相互作用について、酵母two-hybrid法により調査した。その結果、ABA関連PP2CとABA依存型SnRK2が特異的に相互作用することがわかった。この相互作用の一部は、植物培養細胞を用いた免疫沈降法とBiFC実験により、植物細胞内でも実証された。次に生化学的な相互作用について調査した。植物細胞から免疫沈降により精製したSnRK2と大腸菌で発現させ精製したPP2Cを相互作用させ、SnRK2の活性を調査した。その結果、ABA関連PP2Cの作用によりSnRK2の活性が消失することが判明した。また、abi1-1型変異PP2CにもSnRK2の活性を除去する能力があることがわかった。次に培養細胞を正リン酸でラベルし、SnRK2を調整した。その結果、ABAで処理をする前からSnRK2はリン酸化を受けていること、ABAによりさらにリン酸化されること、PP2CによりABA依存的なリン酸化のみが除去されることが判明した。以上のことから、PP2CはSnRK2に結合し、SnRK2のリン酸をはずすことによりSnRK2の活性を抑えていることが示された。さらに、本年度中に、可溶状態のABA受容体PYR1が報告され、それはABA依存的にPP2Cの活性を抑制することが報告された。そこで、大腸菌で発現させたPYR1、PP2C、植物培養細胞から調整したSnRK2、そしてABAによりin vitroで再構成することを試みた。その結果、SnRK2の活性がABAおよびPYR1依存的に保たれることが示された。さらにabi1-1型PP2CではABA依存性がなくなり、恒常的に不活性になることも実証された。これらの結果より、世界で初めてABAの情報伝達経路を明らかにした。
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