研究概要 |
本年度は、ABA情報伝達関連PP2CのAHG1およびAHG3の機能解析とオルガネラRNA編集に関与すると考えられるAHG11の標的探索を重点的に行った。 AHG1,AHG3は、種子でのABA応答で重要な役割を演じていること、核のみに局在することなど他のABA情報伝達関速PP2Cとは異なる性質を持つ。その為、AHG1,AHG3は、昨年度我々が報告したSnRK2以外に独自の標的を持つと考え、その探索を試みた。TAP法によりAHG1と相互作用する分子を植物抽出液から選択しLC/MSで同定した。その結果、転写抑制複合体の構成因子の一つが、高い確度で同定された。酵母2-hybrid実験で関連因子を対象に検証した結果、AHG1とAHG3はこの因子やその類似因子と相互作用するが、ABI1など他のABA関連PP2Cにはその活性がなく、この相互作用がAHG1,AHG3特異的であることが明らかとなった。これにより、種子においては最近明らかになったABA情報伝達機構以外の制御機構がある可能性が示唆された。 ahg11変異は発芽時のABA感受性が高いが、その原因遺伝子は、pentatricopeptide repeatタンパク質(PPR)をコードしている。PPRは、これまでの研究からオルガネラmRNAのスプライシングや編集に関わっていることが示されている。本年度は、AHG11の標的mRNAの同定を試みた。これまでのAHG11-GFPを用いた解析からミトコンドリアで機能していると予想し、ミトコンドリアmRNAの編集部位約400カ所を調査した。その結果、ミトコンドリアnad4転写物の一つの編集がahg11で欠如していることが判明した。この結果は、nad4機能またはミトコンドリア機能とストレス応答との関連について、新たな重要な知見を提供した。
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