研究課題
研究は、ほぼ交付申請書に記載された内容に沿って行われた。1)ヌタウナギの性ステロイドホルモン合成酵素群のうち、前年度にクローニングされたコレステロール側鎖切断酵素(CYP11A)の翻訳領域の全アミノ酸配列(約1800bp,600アミノ酸残基)が明らかとなった。さらに、生殖腺におけるCYP11AのmRNA発現量は雌雄とも生殖腺の発達段階とよく相関して上昇することが明らかとなった。また、ナメクジウオのCPY19抗体を用いての免疫組織化学では、クロヌタウナギの精巣ライディッヒ細胞と卵巣濾胞組織に明瞭な陽性反応が検出されたことから、ヌタウナギにおいてもこれらの組織でステロイド合成が行われていることが示唆された。2)時間分解蛍光免疫測定法(TR-FIA)により、ヌタウナギの血中エストラジオール17β(E2)とテストステロン(T)の測定系を確立した。血中E2含量は雌雄とも生殖腺の発達に伴って有意に上昇したが、血中Tレベルは生殖腺の機能状態との関連性は認められなかった。3)ゴマ油に溶かしたエストロジェン(EB)をクロヌタウナギの腹腔内に隔日に2回投与し、4日目に屠殺し、下垂体内の生殖腺刺激ホルモン(GTH)mRNAの発現量をリアルタイムPCRにて測定した。その結果、GT且遺伝子発現量は対照群と有意差がなかったことから、EB投与によりGTH生産は抑制されなかったことがわかった。これにより、エストロジェンの下垂体に対する負のフィードバック作用は生産抑制よりも分泌抑制に働いていることが示唆された。以上の1)~3)の結果から、最も原始的な脊椎動物であるヌタウナギにおいても、生殖腺におけるステロイドホルモンの合成と分泌カミ生殖腺の発達に深く関与していること、ならびに下垂体一生殖腺間のフィードバック機構の存在が明らかとなった。
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