本研究の目的は、無尾両生類の特徴を利用して、抗利尿ホルモン(ADH:両生類では神経葉ホルモンのアルギニンバソトシン)応答性の水吸収機構の原理と進化を分子・遺伝子レベルで解析すると共に、無尾両生類が水分が乏しい環境へと生息域を拡大したプロセスを考察することである。本年度は、樹上型両生類アマガエルのAQP-h2、-h3、-h2Kの遺伝子がクラスターを形成していると予想されるゲノム領域の塩基配列(約300kbpと予測)を決定し、魚類、水棲型無尾両生類、哺乳類の相同なゲノム領域と比較し、脊椎動物におけるホルモン応答性AQP遺伝子の進化を推察する計画であった。 まずFosmidライブラリーの作製補助をお願いしている基礎生物学研究所形質転換生物研究施設成瀬清准教授の研究室にお伺いし、ニホンアマガエル(Hyla japonica)雄の個体全組織からDNAを調製し、Epicentre Biotechnology社のCopyControl Fosmid Library Production Kitに従い、ニホンアマガエルゲノムDNAのFosmidライブラリーを作製した。当初は文献から、アマガエルのゲノムサイズは550Mbpであり、X.tropicalisのゲノムサイズ1500Mbpより小さいので、ニホンアマガエルのADH応答性AQPの遺伝子クラスターが存在する領域も300kbp程度と予想していたが、予想以上にゲノムDNAが大きいためか、PCRでのスクリーニングでクローンが1つも得られなかった。現在、原因の追究をすべく、PCRでのスクリーニング過程のチェックを行っている。
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