研究概要 |
本研究の目的は、無尾両生類の特徴を利用して、抗利尿ホルモン(ADH:両生類では神経葉ホルモンのアルギニンバソトシン)応答性の水吸収機構の原理と進化を分子・遺伝子レベルで解析すると共に、無尾両生類が水分が乏しい環境へと生息城を拡大したプロセスを考察することである。本年度は、ニホンアマガエル(Hyla japonica)雄由来Fosmidライブラリーをスクリーニングし、AQP-h3、AQP-h2K、RAcGAP1の遺伝子を含むクローンを得た。AQP-h3遺伝子については、上流1,923bpと第1エキソンを含む2,475bpの配列、第2エキソンと第3エキソンと下流364bpを含む6,788bpの配列、その他2,655bp、2,188bp、12,732bpの5つの遺伝子周辺のゲノム配列のコンティグが得られた。AQP-h2K遺伝子については、転写開始点から上流840bpおよび下流1,952bpまでを含む12,111bpの配列、その他15,310bp、1,069bp、878bp、1,269bp、976bpの6つの遺伝子周辺のゲノム配列のコンティグが得られた。RACGAP1については、34,771bpのRACGAP1遺伝子を含むゲノム配列を決定した。以上の結果から、AQP-h3遺伝子とAQP-h2K遺伝子は、それぞれ4個のエキソンから構成され、RAcGAP1遺伝子は17個のエキソンから構成されていることが明らかとなった。AQP-h3遺伝子とAQP-h2K遺伝子のエキソンの塩基配列の類似性、およびエキソン/イントロンの構成の類似性は、これらの遺伝子が重複により生じたことを示唆している。さらに、これらの遺伝子の周辺に存在する繰り返し配列の多さは、AQP遺伝子が重複しやすい性質を持っていることを示唆している。
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