研究概要 |
21年度に確立できた有機溶媒置換凍結乾燥法を用いて、新規にマナマコ口器部より周口神経を、体幹部より放射神経を単離した。それぞれ乾燥重量で10-30mgの神経組織を単離した。これらからの網羅的EST解析には、沖縄科学技術研究基盤整備機構(OIST)との共同研究により次世代シーケンサを用いて実施する予定である。しかし、当研究室で進めているマガキ神経ペプチドのEST解析・質量分析より、一つのcDNA配列中に同種あるいは異種の短鎖ペプチド配列を他数回繰返し含むcontig配列が多数存在することが明らかとなった。当初、予定したIllumina社DNAシーケンサでは、そうした短鎖ペプチド配列のマルチリピート構造の解析には向いておらず、解析後のアセンブル作業において配列精度の相当程度の低下が懸念された。現在、より長い解読が可能なロシュダイアグノスティックス社のFLXを用いた解析を実施する為の準備・予備検討を実施している。 神経ペプチドの網羅的解析をEST解析と共に支える、質量分析によるペプチドーム解析の条件検討と解析条件の最適化を継続した。試料としてはマガキ内臓神経節由来のペプチド画分を用い、検出ペプチドの配列決定には同神経節のESTデータ(ユニーク配列数25,000)を参照し配列精度を向上させた。質量分析計によるMS/MS測定データよりde novoアミノ酸配列解析を実施し、予想したアミノ酸配列の正確性をEST配列データとの一致により確認した。これによりマガキ内臓神経節抽出物中より、アミド化ペプチド59種、非アミド化ペプチド327種、計386種のペプチドが実際に発現していることを確認した。この成果により、ESTデータを参照することで、特定組織において発現している生体ペプチドを、短期間に網羅的に検出・同定する事が可能で在ることを実証できた。前段の様な状況で、今年度中にはマナマコの配列解析は推進できなかったが、解析環境の整備は既に完了し、ESTデータの整備と同時に直ちに発現ペプチドの解析が可能となっている。
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