研究概要 |
様々な条件(核相の異なる円石形成細胞と非形戒細胞、石灰化促進条件下の細胞と抑制条件下の細胞、及び近縁種P.carteraeの野生株と円石欠損変異株(PS2-、PS3-))でのアレイ解析により得られた円石形成関連遺伝子の候補について、そのcDNAクローンの全長塩基配列の決定を行った。また、候補遺伝子の一つカーボニックアンヒドラーゼ遺伝子については、得られた配列を基にPCRプライマーを作製しgene familyの塩基配列の決定を行い、翻訳産物の局在性・機能推定のための準備を行った。さらに、円石に含まれる酸性多糖(Ph-PS-1,-2,-3)の機能を推定する目的でその円石内における局在性・結合の強さについても検討を行い、酸性多糖が完全に抽出される次亜塩素酸処理(5%次亜塩素酸,85℃,1h)では結晶がばらばらになるが、Ph-PS-2の一部が残る条件(5%次亜塩素酸、0.1M HEPES-NaOH,pH8.5,85℃,1h)では結晶はばらばらにならないこと、抽出した酸性多糖とCa2+との共沈殿物(人工クリスタルコート)をウレア抽出した場合Ph-PS-1と-3は抽出されるがPS-2は抽出されないことが示され、このことからPh-PS-2は結晶間もしくは結晶とベースプレートの間にも存在し結晶をつなぎ止める役割をしており、他の酸性多糖よりも強く円石に結合していることが明らかとなった。これまでの結果と合わせて考えると、Ph-PS-2は円石表面に加え円石内部(ベースプレート上及び結晶間)に強く結合し、結晶核の形成に寄与していることが示唆された。また、ベースプレート上でのin vitro石灰化に及ぼす酸性多糖の影響についても、SEM及びナノサーチ顕微鏡を用いて検討した。
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