研究課題
モデル植物を用いて、生活環全体を通じて多くの組織・細胞群で種々に分化した色素体の形態を電子顕微鏡学的に網羅的に解明し、「色素体分化地図」を作成することを目的とした。将来的には変異体と野生型の色素体形態とを詳細に比較することにより、葉緑体以外の色素体形成に貢献する遺伝子機能の予測と状態を蓄積すると共に、モルフォローム解析の有用性を示すことができる。平成21年度は、前年度に行った野生型モデル植物の観察結果を元に、以下の(1)~(3)に示すような、種々の突然変異体の解析を進めた。(1)不稔の表現型がみとめられた突然変異体の観察不稔形質を示す、hmg変異体、ipi1、ipi2二重変異体、cerl変異体、casl変異体、花粉エキシン形成に異常を示す変異体等を広く入手し、葯の電子顕微鏡観察を行った。その結果、hmg変異体、ipi1、ipi2において、葯タペータムのエライオプラスト(脂質を蓄積した色素体)における形態異常を確認することができた。(2)葉の色に異常がある突然変異体の観察原因遺伝子が特定されている数ラインの斑入り突然変異体の観察を進めた。その結果、子葉と本葉における葉緑体分化メカニズムは、かなりの点で異なることが明らかになった。また、種子胚及び発芽初期の色素体形態が、細胞ごとまた細胞内においても大きく異なることが示され、細胞分化指標の新しいモデルを提唱できる可能性を示した。(3)果実の色の異常がある突然変異体の観察ナス科植物のモデル植物としての最近注目されているトマト(マイクロトム)、及び多様な果実色を有するトウガラシを用いて、果実成熟過程における葉緑体からクロモプラスト分化の観察を行った。その結果、幾つかの新規構造体wp見出すと同時に、その構造体の由来成分(カロテノイド)を推測することができた。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件)
Journal of Plant Research vol.123
ページ: 193-199
Journal of Experimental Botany vol.60
ページ: 2005-2064
Plant Cell Physiol. vol.50
ページ: 904-908
Plant Morphology 21巻
ページ: 55-62