研究概要 |
光化学系IIに光を集める集光性クロロフィルa/b結合タンパク質複合体(LHCP II)は細胞核にコードされ細胞質で合成され,何らかの方法によって葉緑体に運ばれて2段階のプロセッシングを受けた後,チラコイド膜に組込むことが知られている.先に,われわれはユーグレナの葉緑体発達過程でLHCP II分子がゴルジ体を経由する現象をみいだした.その後,この現象はSchwartzbachらにより,^<35>Sの取込み実験で生化学的に裏付けられた。Morseらは渦鞭毛藻類のRuBisCO,Villarejo(2005)らは高等植物,Redhamony(2006)らは各々核支配の葉緑体タンパク質ERから,ゴルジ体を経由し葉緑体へ輸送されることを確かめている.高等植物でも同様の現象が確認され,単細胞から高等植物にいたる普遍的な現象であることが明らかにされた.今回は,LHCP II分子がゴルジから葉緑体へ輸送される経路に着目し,免疫電顕法を用いてLHCP II分子の動態を経時的に観察した.ゴルジ小胞体は,葉緑体包膜と融合することが形態学的に確認され,さらにゴルジ体由来の小胞体がミトコンドリア外膜と融合している像も観察された,同時にゴルジ小胞体内部のLHCP IIも免疫電顕法により確認されている。本研究の過程ではミトコンドリアのタンパク質の一部もゴルジ体を経由する可能性が示唆された.光合成タンパク質の葉緑体への輸送は,小胞体が最初に葉緑体に融合する最初の知見が得られた.
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