同調培養したユーグレナの光化学系IIの光合成タンパク質複合体(LHCPII)がゴルジ体を経由して葉緑体に輪送される現象を最初にみいだした。その後、多くの研究者により、このような現象が単細藻類のみならず高等植物でも報告され、普遍的な現象であることが明らかになった。しかしながら、次にLHCPII分子がゴルジ体から、葉緑体へ輸送されチラコイド膜に組込まれるという輸送経路に関する報告はない。今回は、LHCPII分子が、どのようにしてチラコイド膜に特異的に運ばれるか免疫電顕法で追跡した。ユーグレナ細胞を経時的に採取し、急速凍結置換固定法で固定、免疫電顕法によりゴルジ小胞体を追跡した。連続切片・電顕観察すると小胞体が3層構造を有する葉緑体最外層との膜融合像が得られた。同時に、免疫電顕法によりLHCPIIのゴルジ小胞体内への特異的な局在が観察された。すなわち、LHCPIIはゴルジ体を経由した後、ゴルジ小胞体で葉緑体へ輸送されることが分かった。先にGibbsら、Krothらは、ユーグレナの細胞核支配タンパク質が細胞質から直接葉緑体に運ばれ、3層の胞膜透過説を発表している。一方、光合成タンパク質LHCPIIはゴルジ小胞体により葉緑体に輸送されている事実から、LHCPIIの葉緑体への輸送は、彼らの膜透過機構説では説明できない。したがって、光合成タンパク質LHCPIIが、チラコイド膜に到達するには、ゴルジ小胞と葉緑体最外膜との融合の後に、中間膜と内膜とを透過すると思われる。
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