研究概要 |
ユーグレナ(Euglena gracilis Z株)を暗所で静置培養し無機培地に移して通気後にこ、0,1%ストレプトマイシンを添加し、正常な葉緑体形成を誘導する照度150 ft-cの光を照射して、葉緑体が形成される過程をTEMで経時的に追跡した。その結果、暗所でもプラスチド内部の構造は、ある程度の発達がみられた。すなわち、プロラメラ体、プロピレノイドに隣接し高電子密度構造が形成され、光照射するとピレノイド構造からは数枚のチラコイド膜が包膜に沿って形成された。プラスチド内部のプロラメラ体はストレプトマイシンが存在すると光照射後も消失が起こらなかった。このような葉緑体形成過程について、抗LHCPII抗体-免疫電顕法で経時的に観察すると、LHCPIIはストレプトマイシン存在下では、高電子密度構造上に特異的に局在し、未発達のチラコイド膜には観察されなかった。さらに、通常、LHCPIIタンパク質分子はゴルジ装置を経由して、プラスチドに輸送され、ストレプトマイシン存在下でも、LHCPIIはゴルジ装置を通過することが判った。すなわち、LHCPIIはストレプトマイシン存在下で、ゴルジからプラスチド内部に輸送され、LHCPIIは高電子密度構造のプロラメラ体およびピレノイドに局在することが免疫電顕法により新しく判った。光照射によりピレノイドからチラコイド膜構造が新しく形成されるが、チラコイド膜は未発達で、相互のスタッキングはみられなかった。さらにピレノイド局在のLHCPIIは未発達のチラコイド膜へは転送はされないことが明らかになった。 以上の結果から、LHCPIIタンパク質分子はプラスチド内部で、チラコイド膜に適切に輸送され配置されるためには、チラコイド膜の発達とプラスチドDNAにコードされ合成されたタンパク質の介在が必要と思われる。
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