研究概要 |
[第2年度]では,細胞組織細胞化学的な造血巣の情報の獲得とともに,生物学的機能の解析を推し進めた。まず,溶血性貧血,瀉血性貧血,低温暴露貧血ツメガエルモデルを確立した。溶血性あるいは瀉血性貧血を誘導した個体に核酸アナログBrdUを投与し、貧血に応答して肝臓で増殖する血球細胞を検出した(日本動物学会)。各モデルで諸因子の発現変動を調べた。特に先行したErythropoietin(EPO)を例に挙げると,まずRT-PCRでEPOは肺に強発現,また,赤血球前駆細胞が存在する肝臓,脾臓でも発現が高く,貧血の進行とともに発現量は変動した。ヒトやマウスとは異なり,肝臓には赤血球前駆細胞が存在しており,世界で初めて非哺乳動物をモデルに傍分泌刺激によって肝臓でEPOが赤血球産生を刺激することを明らかにし,誌上発表を果たした(Nogawa-Kosakaら,Exp.Hematol., 2010)。肺におけるEPO高発現も哺乳類における知見からは意外であった。そこでリアルタイムPCRでEPO発現量を精査した。内在性対照遺伝子としてGAPDH、β-Actin、RPL13Aを比較評価したところ、GAPDHは溶血性貧血で発現が上昇する傾向があり,複数臓器間で比較定量する場合は,RPL13Aが対照として適切(臓器間の発現差が小さい)であった。RPL13Aを対照にし,正常個体の臓器間発現量を精査した結果,やはり肺が最も高く,肝臓と脾臓ではその1/70,1/800であった。一方,貧血個体では脾臓のEPO発現が最も上昇し23倍にもなった。従って臓器間・生物種間でEPOの分子機能と発現制御が多様性を示す可能性がある。栓球造血や白血球造血についても具体的な検討・報告を進め(日本動物学会,国際実験血液学会,日本血液学会など),ツメガエルは未知の制御系探求にとって極めて興味深いモデルであることが認知されつつある。
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