研究課題
ステロイドホルモンは、その受容体と結合することにより生体の恒常性維持、内分泌器官への作用など、様々な組織で多彩な作用機構を有している。本研究では、この性ステロイドホルモンの受容体が、どのように分子進化をしてきたのか、また、ステロイドホルモンとの結合能の獲得・特異性や転写因子としての働き等、受容体としての機能獲得の進化上の段階を解明し、ステロイドホルモン受容体の分子進化を統一的に理解する事を目的としている。本年度は、脊椎動物に最も近いといわれている脊索動物であるナメクジウオから2種類のステロイドホルモン受容体遺伝子の単離に成功した事が特筆される。ナメクジウオのステロイドホルモンの合成経路についてはかなり理解されているが、それらホルモンの受容体に関しては不明であった。PCR法を駆使してナメクジウオから2種類のステロイドホルモン受容体遺伝子を単離した。一つ目は、脊椎動物のエストロゲン受容体のオーソログ(ER)であると考えられ、残りの1つはアンドロゲン受容体のようなケトステロイドホルモンの受容体のオーソログ(SR)である事が判明した。機能解析を行なったところ、興味深い事にナメクジウオのERは脊椎動物のERが認識するDNA配列とは結合できるが、リガンド依存的な転写活性を持たない事が分かった。これはナメクジウオERがリガンドであるエストロゲンと結合しない事によるものである。さらにナメクジウオSRはケトステロイドではなくエストロゲンと結合し、エストロゲン受容体が認識するDNA配列と結合できる事が分かった。これらの結果は、性ステロイドホルモン受容体の分子進化を理解する上で非常に興味深い知見であり、大きなインパクトのある実験結果である。
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