これまでの哺乳類を中心としたグレリンの研究では、1種の受容体と、そのリガンドであるグレリンが1種類同定されている。一方、ゼブラフィッシュやキンギョには、アミノ酸配列や性質の異なる2種のグレリン受容体1a、2aが存在する。このことは、キンギョを用いた研究からその各々2種の受容体に対するリガンド、すなわち第2のグレリンが同定できる可能性、また生体における新しいグレリンシステムの存在を示すことができる可能性を示唆する。 22年度は、21年度までに同定した4種類のキンギョグレリン受容体(gfGHS-R)1a-1、1a-2、2a-1、2a-2のうち、キンギョグレリンに対して親和性の低かった1a-1、1a-2に対する新しい内在性リガンドの存在を想定し、そのペプチド性リガンドの同定を目指して研究を遂行した。ペプチドホルモンの多い脳およびグレリンの存在する腸の組織抽出物からペプチド画分を得、イオン交換クロマトグラフィーで強塩基性画分を調整し、ゲル濾過HPLC、CMイオン交換HPLC、逆相HPLC等、各種クロマトグラフィーで展開したペプチド分画をgfGHS-R1a-1、1a-2、2a-1ならびにラットグレリン受容体(rGHS-R)を発現させた細胞に処理し、細胞内Caイオン濃度の上昇を指標に新規グレリンを追跡した。 その結果、グレリンに高親和性のgfGHS-R2a-1ならびにrGHS-Rでは同定済みのキンギョグレリンを検出し単離できたが、gfGHS-R1a-1および1a-2に対して高親和性に反応するペプチド分画を得ることはできなかった。 以上の結果から、少なくとも脳と腸には第2のグレリンが存在していない可能性が高いと結論された。一方、既知のキンギョグレリン遺伝子は脾臓でも高い発現が認められる。従って、脾臓に想定するペプチドが存在する可能性は残っているが、本年度はその実験を遂行することができなかった。
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