1.ショウジョウバエのvisual cycle関連蛋白質 昨年度の研究から、ショウジョウバエ網膜においてレチナールの光異性化に関与する蛋白質として、色素細胞に特異的に存在することが明らかとなっている網膜特異的酸化還元酵素(PDH)が、最有力候補として同定された。この蛋白質のin vivoでの機能を解析することを目的として、その欠損変異体の作成を行った。FLP/FRTによる組換えシステムを用いた染色体欠失法を利用することにより、PDH遺伝子のみを特異的に欠損させた変異体の作成に成功し、PDH蛋白質が全く発現されないことを、イムノブロッティング法により確認した。この変異体の機能解析が、今後の課題である。一方、ビタミンA欠乏培地での飼育により、その発現量が変化する蛋白質について、2次元電気泳動法による分離と質量分析を用いたPMF分析を試みた。2次元電気泳動による分離には成功したが、質量分析には更なる量が必要であることが分かった。 2.コオロギ網膜におけるレチノイド代謝経路 フタホシコオロギ網膜におけるレチノイド代謝経路を明らかにするために、この経路に関与するレチノイド結合蛋白質の同定とその機能解析を試みた。コオロギ網膜の水溶性画分をネイティブ電気泳動により分離し、紫外線照射により生ずる蛍光検出を行って、レチノール結合蛋白質を検出したところ、分子量約36kの蛋白質を見出した。HPLCによる解析から、この蛋白質は暗所で全トランス形レチノールを結合しており、光照射により結合するレチノールが11-シス形に変化することが示唆された。
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