本年度は、スジキレボヤにおけるバナジウムの高選択的濃縮機構に関わる金属タンパク質ネットワークの解析に関して以下の研究を行った。 1.バナジウム結合タンパク質と金属輸送体との関係を明らかにするために、スジキレボヤおよびヒトのmetal-ATPaseの細胞内金属結合ドメインを取り出して組み換えタンパク質を作成した。両者の金属選択性およびタンパク質間相互作用を比較した。バナジウム結合能がmetal-ATPaseに普遍的な性質であると示唆された。 2.バナジウム結合タンパク質問の金属授受解析を目指して、Vanabin1-4およびVBP-129の組み換えタンパク質を作成し、ゲル濾過および金属固定化カラムによってバナジウム結合能を調べた。Vanabin4からVanabin2への金属受け渡しを示唆する結果が得られた。VBP-129の変異体を作成し、バナジウム結合およびVanabinPとの相互作用に必須のドメインをそれぞれ同定した。 3.スジキレボヤ血球から、2種類のネイティブ型Vanabin-Interacting Protein(VIP1)の精製を試みた。生理・環境条件によってその存在比が変動することを見出した。 4.金属結合タンパク質の機能発現に関与するタンパク質の網羅的同定の準備段階として、スジキレボヤ血球からmRNAを抽出し、そのcDNAをターゲットベクターpBTに組み込んだcDNAライブラリーの作成を試みた。
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