研究概要 |
原生生物テトラヒメナ(Tetrahymena pyriformis)の繊毛運動の持続のためには,ATPの連続的な供給が必要であり,それはアルギニンキナーゼ(AK)を介した「アルギニンリン酸シャトル」機構によって維持されていると考えられている.1970年にWatts & Bannisterは,テトラヒメナ(Tetrahymena thermophila)に分子量の異なる二種類のAKが含まれることを示した.また我々は,T. thermophilaのゲノムデータベースを徹底的にサーチし,ゲノム配列から二種類のAKアミノ酸配列(AK1,AK2)を抽出した.しかし,実際に両遺伝子がテトラヒメナの中で発現しているかどうかは,不明である.この研究では,T. piriformisを材料にして,原生生物由来のAK遺伝子(mRNA)の発現を初めて確認するとともに,そのcDNA及びゲノム構造を決定する.また,大腸菌でAK遺伝子を発現させてリコンビナント酵素を得る.更に,その酵素機能を詳細に測定し,他のAKとの比較から原生生物のAKの特性を明らかにする.また二種類のAKの局在を明らかにする.今年度は,T.pyriformisからmRNAを抽出し,コンセンサスプライマーを用いたPCR法により二種類のAK cDNAを増幅して,プラスミドヘクローニングした.原生生物の遺伝子では,Glnのコドンが,終止コドンで代用されているので,これを通常のものに変異させる必要がある.T. piyriformis AK1(40kDa酵素をコード)では,この変異を終え,Hisタグ(6xHis)を付加したリコンビナント酵素として発現させるために,pETベクターへの乗せ換えた。また,このリコンビナント酵素の酵素活性を予備的に測定した.一方,二種類のAK cDNA配列とゲノム配列を比較することでエキソン/イントロン配置を特定した.
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