研究概要 |
原生生物テトラヒメナ(Tetrahymena pyriformis)の繊毛運動の持続のためには,ATPの連続的な供給が必要であり,それはアルギニンキナーゼ(AK)を介した「アルギニンリン酸シャトル」機構によって維持されていると考えられている.我々は,テトラヒメナに分子量の異なる二種類のAK(40kDaのAKI及び遺伝子の重複と融合によって生じた2ドメイン型80kDaのAKII)が含まれることを見い出した.本年度は,二種類のAKのC末にHisタグを付加しリコンビナント酵素を発現させ,両者の酵素活性を詳細に比較した(第81回日本動物学会にて発表).更に、2ドメイン型のAKIIはドメイン1と2に分離した酵素も作成して酵素活性を測定した.作成した4種類のリコンビナント酵素は,いずれも十分なAK活性を保持していた.ただし,AKIのリコンビナント酵素は構造的に不安定で,信頼性のある酵素パラメータを出すには時間を要した.AKIは,その抗体を用いたウエスタンブロッティングの結果から(昨年度の成果),繊毛に局在していることが明らかになっている.AKIのアミノ酸配列を詳細に検討した結果,N末のグリシンにミリストイル基が結合する可能性が強く示唆された.AKIは疎水的なミリストイル基を介して繊毛膜に結合し,構造的にも安定化している可能性がある.今後,AKIにおけるミリストイル基の存在の実証,ミリストイル化を触媒する酵素(N-ミリストイル・トランスフェラーゼ)のクローニング,及びミリストイル基の存在下,及び非存在下におけるAKI酵素機能の差異等を明らかにしていきたい
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