研究概要 |
哺乳類副甲状腺(上皮小体)細胞の細胞膜にはCa^<2+>受容体(CaR)が発現しており,この細胞は血漿Ca^<2+>濃度変化を直接検出しながら上皮小体ホルモン(PTH)分泌量を変化させる。カエル副甲状腺においても同様な機序が働いているかについて解析した。ウシガエル副甲状腺を摘出し,酵素処理により単離副甲状腺細胞を得た。細胞外液のCa^<2+>濃度を静止時の1.8mMからそれ以上に増加させると,副甲状腺細胞はCa^<2+>濃度に依存した内向き電流を示す。この電流は,100μM niflumic acidによりほぼ完全に抑制され細胞内Ca^<2+>濃度上昇により活性化されるクロライド電流であると考えられる。細胞外液にジアシルグリセロール(DAG)リパーゼの特異的阻害剤である10mμM Tetrahydrolipstatinを投与すると,細胞外Ca^<2+>誘発電流の大きさは対照値の10%に低下した。同様に,モノアシルグリセロール(MAG)リパーゼの阻害剤である1μM Methyl arachidonoyl fluorophosphonate(MAFP)も細胞外Ca^<2+>誘発電流を対照値の6%に低下させた。エポキシゲナーゼの阻害剤である20μM MS-PPOHやシクロオキシゲナーゼの阻害剤である20μM Dicrofenacは、細胞外Ca^<2+>誘発電流を全く抑制しなかった。一方,リポキシゲナーゼの阻害剤である20μM ETYAと20μM Baicaleinは,細胞外Ca^<2+>誘発電流の大きさを有意に低下させた。 以上の結果を総合的に考察すると、細胞外Ca^<2+>受容体にCa^<2+>が結合すると,PLCにより膜PIP_2がIP_3とDAGに解離し,次いでDAGはDAGリパーゼの作用により2-AGとなり,さらにMAGリパーゼによりアラキドン酸とグリセリンに代謝される。アラキドン酸はさらにリポキシゲナーゼにより代謝され,それ以降の代謝産物がCa^<2+>流入を誘発すると考えられる。PLCは3量体Gタンパクにより活性化されるPLCβとチロシンリン酸化により活性化されるPLCγに分類される。次年度は,チロシンリン酸化-PLCγカスケードによるアラキドン酸代謝が進行する可能性を解析する予定である。
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