研究概要 |
1) 線虫(C. elegans)生殖巣筋上皮細胞の産卵時の収縮制御におけるトロポニンの重要性 前年度の研究で、産卵時の筋上皮細胞の収縮をトロポチンが制御することが明らかとなったので、トロポニンI (TnI)に着目し、筋上皮細胞で重要な2つのTnI (TnI-1, TnI-2)の内、TnI-2を欠損するミュータントの線虫(unc-27)にTnI-1のRNAi処理を施し、ほぼ完全にTnI-1を除いた結果、筋上皮細胞の異常な過収縮、産卵の障害、卵の成熟障害が起こることがわかった。また、筋上皮細胞で発現するミオシンを妨げると筋上皮細胞の過収縮は起こらないので、TnI-1はアクチン・ミオシン相互作用(収縮)に直接に作用することが明瞭である。TnI-1, TnI-2のいずれか一方が存在すれば、筋上皮細胞の収縮は正常に制御される。TnI非横紋性のアクチン線維に局在している。横紋筋以外の非横紋性運動システムでトロポニンが重要な役割を果たすこと、即ち従来の理解を超えたトロポニンの新たな役割が明らかとなった。成果は、細胞隼物学の一流雑誌(J Cell Sci)に掲載、重要な成果の写真が雑誌の表紙を飾ることになった。 2) トロポニンの機能の多様性 ホヤ平滑筋および横紋筋のトロポニンいずれもが、脊椎動物横紋筋トロポニンと異なり、アクチン・ミオシン相互作用のCa^<2+>-依存的な促進因子として働くことを、組み換え体トロポニン成分(TnT, TnI TnC)の複合体を用いて明らかにした。さらに、促進因子としての働きを平滑筋TnTおよび横紋筋TnTが担うことを確認した。TnTの種々の断片を組み換え体タンパク質として作成して機能検定し、促進作用をになう部位を明らかにした。
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