研究概要 |
1.ゴールデンバルブ皮膚の赤色素胞のプロラクチン(PRL)に対する反応性と、その細胞内情報伝達機構の生理学的解析を行った。赤色素胞は予想通りPRLに対して色素顆粒拡散反応を示した。アデニル酸シクラーゼ(AC)の特異的阻害剤(MDL-12)、サイクリックAMP依存性プロテインキナーゼA(PKA)の特異的阻害剤(H-89)で処理すると、濃度依存的に拡散反応は阻害された。一方、プロテインキナーゼJak2の阻害剤AG400は高濃度では反応を阻害することが分かったので、より特異性の高い新規阻害剤WP1066を用いた結果、ゼブラフィッシュ、ゴールデンバルブの両方で黄・赤色素胞のプロラクチンに対する反応が濃度依存的に阻害された。次に低分子Gタンパク質Rasの関与を、Rasの阻害剤を用いて検討したところ、両魚種の黄・赤色素胞とも、プロラクチンに対する反応性が濃度依存的に阻害された。以上の結果より、黄・赤色素胞におけるJak2-Ras-AC-PKAを介する新しいプロラクチンの情報伝達経路が存在する可能性が示唆された。次年度はRasの関与を生化学的方法で確認する予定である。また、Rasの活性化に関わる因子の同定も行い、情報伝達経路を明らかにしたい。 2.ゴールデンバルブ赤色素胞由来のプロラクチン受容体のcDNA断片を作成しPCRを行った結果、予想される鎖長のバンドを確認した。理由来のcDNAをポジティブコントロールとした。赤色素胞からのPCR産物の配列を決定したところ、ゼブラフィッシュのプロラクチン受容体-A(PRLR-A)と相同性が高いことが判明した。なお、コイのPRLR-Aと最も高い相同性を示した。現在、3',5'RACEにて塩基配列の解読を継続している。
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