研究概要 |
1) ゴールデンバルブの赤・黄色素胞からプロラクチン受容体(PRLR)のクローニングを行った結果、923塩基、307アミノ酸を同定することができ、昨年度得られたゼブラフィッシュPRLR-aとの塩基配列の相同性は83%であった。これらの結果より、魚類の赤・黄色素胞のプロラクチン受容体はPRLR1型(PRLR-aもこのタイプに含まれる)に属すると結論した。 2) PRLR1型を介する情報伝達はこれまでJanus kinaze(Jak2)チロシンキナーゼ-STAT pathwayを経ており、STATが核内DNAと相互作用すると考えられている。しかし、哺乳動物では近年、Jak2のSH2ドメインを介してGrab2のチロシンのリン酸化が起こり、リン酸化されたGrab2がRas(低分子量Gタンパク質)の活性化を誘起するという、従来とは異なる経路が報告された(Charles et. al., 2008)。また、酵母においてRasがACを活性化する経路が報告された(Sarah and Micheal, 2008)。そこで、Jak2の阻害剤WP1066、Rasの阻害剤Sulindac Sulfideの効果を調べたところ、いずれも濃度依存的にPRLによる黄色素胞拡散を阻害した。 3) 続いて、精製した活性化Rasの定量化を試みた。PRLで処理された皮膚標本において活性化Rasのバンドが濃く出ていた。 4) さらに、Grb2全量に対してチロシンリン酸化された割合を決定した。PRL未処理サンプルに比べて、PRL処理サンプルの方がP-tyr/Grb2の値が高かった。 5) これまでに得られた全ての実験結果から、PRL受容体-Jak2-Grb2-Ras-AC-PKAというPRL新規シグナル伝達経路を提案する。この伝達経路によって赤・黄色素胞では細胞内cAMP濃度上昇が起こり、色素拡散が生じると考えられる。
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