研究概要 |
これまでのホヤタキキニンCi-TKとその受容体Ci-TK-Rを対象とした研究により、Ci-TKは卵黄形成期卵細胞のtest cellに作用してプロテーゼの遺伝子発現および酵素活性を上昇させ、卵細胞成長を誘導するというタキキニンの新たな生理作用を解明した。そこで、ホヤをモデル生物として用いて得られたこれらの研究成果を発展させ、ホヤから哺乳類を含む脊索動物の卵巣において、タキキニンがプロテアーゼを制御して促進する卵細胞成長機構を解明することを計画した。20年度の取り組みでは、(1)ホヤ卵黄形成期卵細胞の細胞体にプロテアーゼが存在していることを免疫染色により明らかにした。この結果から、Ci-TKで活性化されるプロテアーゼであるカテプシンDやカルボキシペプチダーゼB1は細胞質で作用することが明らかになった。さらに、(2)哺乳類の3種のタキキニンSP,NKA,NKBとこれらの選択的受容体であるNK1,BK2,NK3に対する免疫染色を8週齢マウスの卵巣に行ったところ、全てのタキキニンおよびそれらの受容体が一次卵胞と二次卵胞の顆粒膜細胞と莢膜細胞に特異的に存在していることを突き止めた。この結果は、ホヤ卵細胞に存在するtest cellと哺乳類卵細胞に存在する顆粒膜細胞や莢膜細胞の機能的相同性が初めて示唆されたものであると同時に、我々がホヤを用いて明らかにしたタキキニンによるプロテアーゼを介した卵細胞成長機構が、哺乳類でも基本的に保存されている可能性が極めて高いことを示している。したがって、本研究計画の妥当性を示され、本研究課題による哺乳類卵巣におけるタキキニン卵細胞成長機構解明の期待が一層高まった。
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