研究概要 |
前年度までの取り組みにより、(1)ホヤ卵黄形成期卵細胞にcathepsin D,carboxypeptidaseB1,chymotrypsinといったプロテアーゼが存在していること、(2)哺乳類(マウス)卵細におけるタキキニンおよびそれらの受容体が一次卵胞と二次卵胞の顆粒膜細胞に特異的に存在していることを(3)NK1、NK2、NK3の各タキキニン受容体の選択的アンタゴニストがほぼ同等に二次卵胞から前胞状卵胞への成長を阻害し、この効果が相加的であったことを決定した。これらの成果に基づき、本年度は以下の研究を実施した。 (1)ホヤ卵細胞におけるプロテアーゼ活性化の時間的制御 ホヤタキキニン受容体(Ci-TK-R)と各プロテアーゼの卵巣における局在を決定するために、in situ hybridizationと免疫染色で決定を行った。その結果、cathepsin Dは卵黄形成期のtes tcellにCi-TK-Rと共存しており、残りの2種の各プロテアーゼは濾胞細胞に局在していることが明らかになった。また、cathepsin Dのプロテアーゼ活性はCi-TKを卵巣に投与してから3時間後に活性が発現して6時間で最大になるのに対し、他のプロテアーゼは6時間後に活性が発現することを解明した。以上の結果から、cathepsin DのはCi-TKにより直接活性化されるのに対し、他のペプチドは2次的に活性化されるという機構が明らかになった。 (2)マウス卵細胞成長におけるタキキニンの作用の同定 NK1、NK2、NK3アンタゴニストを一次卵胞や二次卵胞に投与したところ、顆粒膜細胞の増殖が著しく抑制されることを明らかにした。また、その抑制効果は、各タキキニン受容体アンタゴニストで同等であった。このことから、哺乳類では、タキキニンは顆粒膜細胞の活性化を通じて二次卵胞の成長を促進していることが明らかになった。
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