研究概要 |
本研究は、分子マーカーを用いた系統解析と生理生態的特徴の分析に基づき、有孔虫に共生する紅藻の分類学的位置や、タンパクあるいは遺伝子レベルでの非共生の紅藻との違いを把握することによって、有孔虫と紅藻との共生関係の維持機構や宿主の共生体認識機構の解明に寄与する基盤データの構築を目指すものである。これまでの成果として、調査した地域の共生紅藻はすべて単系統群であることが明らかにしたが、非共生紅藻の単離培養株の一部も同じ系統群に所属していることや、当該有孔虫は世界中の熱帯-亜熱帯海域に生育するため、生物地理学的に広い範囲を網羅した調査を行う必要があった。そこで平成21年度にはこれまで試料が得られていなかったインド洋や大西洋の熱帯・亜熱帯地域の沿岸から有孔虫採集を行い、共生紅藻の培養株作出と宿主有孔虫の分子系統解析を調査した。共生紅藻を保有する有孔虫は、有孔虫の殻を実体顕微鏡下で撮影し、形態による同定を行った後に,殻を破砕して、その一部を共生紅藻分離用とし、残りをDNA抽出に用いた。有孔虫の種の分子同定および系統関係の把握のための有孔虫特異的プライマーを用いて、18S rRNA遺伝子の増幅を行い、塩基配列を決定した。共生藻の培養株は,18S rRNA遺伝子のユニバーサルプライマーを用いてPCR増幅後、塩基配列を決定した。また、共生紅藻、非共生藻の色素成分であるフィコビリンタンパクについて、タンパクレベルでの違いを探るため、両者の培養株をもちいて抽出を行い、等電点電気泳動、ネイティブ電気泳動、SDS-PAGEの適正条件の探索を行った。
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