研究概要 |
クリプト藻綱プラギオセルミス系統群(Plagioselmis、Teleaulax,Geminigera)は、本邦沿岸を含め世界中に海洋プランクトンとして極めて普遍的に存在しており、ときに大増殖するのみならず、赤潮形成繊毛虫Myrionectaおよび有毒渦鞭毛藻Dinophysisに取り込まれてその盗葉緑体となることが明ちかとなっており、生態学、水産学および進化生物学的に極めて重要な生物群である。しかし分類学的な研究はほとんど皆無であることから、本研究ではプラギオセルミス系統群の系統分類学的研究を行った。 瀬戸内海を中心に約20カ所から海水サンプルを採集し、粗培養を行った。ここから特にプラギオセルミス系統群と思われるクリプト藻を単離し、約30個の培養株を得た。またこの過程で他のクリプト藻や微細層の株も確立した。特にDinophysis acuminataが比較的多く見られたた海域付近では特に集中的にサンプルの処理を行い、3株を得ることができた。確立された株に関して光学顕微鏡観察を行った。神戸より単離した株において、大形のTeleaulax型細胞と小形のPlagioselmis型細胞が混在することが観察された。これは同一種において、形態の異なる細胞相(Teleaulax型複相細胞とPlagioselmis型単相細胞)が存在することを示唆しており、今後、各細胞相の塩基配列取得と共にDNA量測定を行っでいきたい。光顕レベルでの形質比較に関しては、いくつかの差異が認められたが、現在検討中である。電子顕微鏡試料に関しては数株について資料を作成した。確立株数個からDNA抽出を行ったが、現在のところ遺伝子増幅、塩基配列決定には到っていない。今後、核・ヌクレオモルフ・葉緑体のSSUrDNA増幅を計画している。
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