研究概要 |
クリプト藻綱プラギオセルミス系統群(Plagioselmis、Teleaulax, Geminigera)は、本邦沿岸を含め世界中に海洋プランクトンとして極めて普遍的に存在しており、ときに大増殖するのみならず、赤潮形成繊毛虫Myrionectaおよび有毒渦鞭毛藻Dinophysisに取り込まれてその盗葉緑体となることが明らかとなっており、生態学、水産学および進化生物学的に極めて重要な生物群である。しかし分類学的な研究はほとんど皆無であることから、本研究ではプラギオセルミス系統群の系統分類学的研究を行った。 東京湾を中心にさまざまな場所から海水サンプルを採集し、粗培養を行った。ここから特にプラギオセルミス系統群と思われるクリプト藻を単離し、培養株を得た。またこの過程で他のクリプト藻や微細層の株も確立した。昨年度までの株と併せていくつかについて透過型電子顕微鏡による超薄切片およびホールマウント試料の微細構造観察を行った。その結果、シート状ペリプラストをもつTeleaulax型細胞とプレート状ペリプラストをもつのPlagioselmis型細胞が確認された。また同一株内で両者が混在するものもあり、これは同一種において、形態の異なる細胞相(Teleaulax型複相細胞とPlagioselmis型単相細胞)が存在することを示唆している。また一部についてはDNA抽出を行い、SSU rDNA塩基配列を決定し、系棟解析を行った。その結果、これらがクリプト藻綱のプラギオセルミス系棟軍に属することが確かめられた。系棟群内での関係については現在検討中である。
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