研究課題
クリプト藻綱プラギオセルミス系統群は、世界中に海洋プランクトンとして極めて普遍的に存在しており、ときに大増殖するのみならず、赤潮形成繊毛虫や有毒渦鞭毛藻に取り込まれてその盗葉緑体となることが明らかとなっており、生態学、水産学および進化生物学的に極めて重要な生物群である。しかし分類学的な研究はほとんど皆無であることから、本研究では本系統群の系統分類学的研究を行った。日本各地から得たプラギオセルミス系統群の培養株のrRNA遺伝子を調査したところ、得られた全ての株で差異がほとんどなく、特にITS2においてCBCが見られないことから、日本沿岸域では本統群の中で特定の1種が普遍的であることが明らかとなった。形態的に、この種はPlagioselmis prolongaと同定できるものであったが、データベースに報告されているものとは塩基配列の上で若干相違しており、検討が必要である。一方でこれらの株は塩基配列の上でTeleaulax amphioxeiaとして報告されているものとほとんど同一であった。このような不一致は、P. cf. prolongaとT. amphioxeiaが同一生物の単相世代と複相世代に相当するものであることを示唆しており、実際に、形態的にT. amphioxeiaと同定できる株がP. cf. prolongaへと移行したのが確認された。またクリプト藻には、プラギオセルミス系統群を含めて9つの系統群の存在が知られているが、その間の系統関係についてはほとんど明らかになっていない。本研究で得られた他のクリプト藻の株と合わせて、遺伝子領域を増やした系統解析を行ったところ、これら系統群の間の系統関係に関していくつか新知見が得られた。特にプラギオセルミス系統群を含むゲミニゲラ科の非単系統性が示されたことは、本科の定義形質がクリプト藻の祖先形質であることを強く示唆しいている。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Protoplasma
巻: 250 ページ: in press
10.1007/s00709-012-0465-8