研究概要 |
プロジェクト2年目にあたる2009年度は,前年度に引き続きミトコンドリアDNA全長塩基配列と用いて,シラスウオ科を含むハゼ亜目全体の系統解析を進めた.この結果,シラスウオ科は同じくハゼ亜目魚類であるクロユリハゼ科やオオメワラスボ科と一つのグループ(クレード)を形成することが明らかになった.この成果は,第8回インドー太平洋魚類国際会議(IPFC)および第11回日本進化学会大会にて発表した.引き続き,このグループ内の系統関係をより精確に明らかにするために,同グループ内の解析対象種を採集や標本交換によって増やす努力を続けている. シラスウオ科魚類の標本採集は,国内では琉球列島の沖縄島北部,国外ではインドネシア沿岸およびハワイ島で実施した.全ての場所で採集に成功したが,特にインドネシアで得られた標本は,本地域におけるシラスウオ科魚類の初記録となるものであった.また,ハワイ島での採集標本数は約1000個体におよび,これらは同じく多くの標本が得られている琉球列島やパラオ(2009年度日本魚類学会年会で発表)との西太平洋を挟んだ地域間における多様性比較を可能にする貴重な試料になると考えられる.プロジェクト最終年度にあたる2010年度は,2009年度に採集された標本の解析の継続と,インド洋における標本採集,総合的な多様化プロセスの解析を予定している.
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