本年度は2010年2月から3月にかけて現地調査を実施し、新たに得られたサンプルとこれまでに採集されていた資料をあわせて検討を行った。 Baberdoap島からCarp島に至る範囲の32地点(これまで全く調査が行われていないKumekumarとOikullを含む)で調査を行い、1500点以上もの陸貝を採集した。2010年の調査で得られたサンプルでは102種の陸貝が同定され、この内の10種が新発見の未記載種で、これまでに未記録であった3属(2新属を含む)が新たに発見された。またゴマガイ類では、種内変異と思われた表現型が同所的に存在する例が発見され、いくつかの"種"には多数の隠蔽種が含まれていることが判明し、固有陸貝の種多様性が予想以上に高いことが分かった。これまでの調査結果から、隆起珊瑚礁の島では陸貝の種多様性および個体群密度が高く、非石灰岩地では陸貝相が貧相であることが分かった。生物種多様性の保全に関しては固有種の多い石灰岩地を重点的に保護する必要があるが、Baberodoap島の非石灰岩地では分布域の狭いゴマガイの固有種が複数発見されため、非石灰岩地にも保全対策が必要であると考えられた。また石灰岩地でも種多様性は大きな島ほど高く、小さな島では陸貝相が貧弱になる傾向が認められた。しかし、Kumekumarのような小さな島でも主要な島から隔離された場合には固有種が発見された。小さな島は森林が貧弱であるため、そこに生息する陸貝は環境変化に脆弱であることが予想され、種数の少ない島でも重点的に保全すべき場所があることが判明した。
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