研究概要 |
海洋島における蘚苔類の多様性,種分化,植物地理および島への移入経路を探るため,小笠原諸島において試料の収集を行った.今年度は6月に北硫黄島,父島,母島で現地調査を行った. 今年度および過去に採取された小笠原諸島産の試料を光学顕微鏡下で比較形態学的研究を行い,外部形態による種の同定を行った.観察した試料の一部を広島大学植物標本庫(HIRO)のデータベースに登録するとともに植物標本として保管した. 昨年度に現地調査を行った聟島列島の試料の分類学的研究を行った結果,同列島から19種の蘚苔類を確認することができた.これらのうち,16種については聟島列島新産であった.この結果は雑誌ピコビアにて公表した. 6月には綿密な計画を立て,史上初となる北硫黄島での蘚苔類調査を実施した.無人島で急傾斜な地形のため,上陸,踏査は困難を極めたが,必要な試料の収集に成功し,無事帰還することができた.これらの試料の分類学的研究を行った結果,北硫黄島新産の50種を含む蘚類19種,苔類40種,ツノゴケ類3種を確認することができた.これらの成果については,2010年3月に開催された日本植物分類学会第9回大会で発表した. 今年度の調査では,種多様性研究の他に,種分化機構解明のためにムニンシラガゴケの集団サンプリングを行った.得られた試料からDNAを抽出し,複数のハプロタイプを検出した.島間,集団間の遺伝的変位が認められた.
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