研究課題
DNAバーコーディングとは、生物の種などの分類群を簡易に同定することや、分類学や進化系統学的な研究を補完することなどを目的として、規定されたDNA塩基配列のごく一部を種の標徴的な"バイオマーカー"として利用しようとするものである。この手法では、すべての動物に対して、ユニバーサル・プライマーを用い、規定したDNA塩基配列を対象として解析をするために、すべての動物に対して同じ手法で情報を得ることができるという大きな利点があるものの、昆虫のように多様な分類群においては、既存の分類体系との整合性等、事前に同定が可能か否かを検証しておく必要がある。そこで、本課題では、ウンカ・ヨコバイ類のバーコードを登録する前に、ユニバーサル・プライマーへの有効性の評価ならびに、モデルケースとして、ヨコバイの1種であるクワキヨコバイ属の分類体系とDNAバーコードとの整合性を検証した。今年度はヨコバイ科16亜科46種85個体、ウンカ科1科1属1種を用いて、DNAバーコードの解析を行った。その結果、すべての個体においてDNA抽出、PCR増幅が確認された。プライマーの認識配列部分とその周辺では塩基のピークが判別しにくいために467bpにまでアライメントを行って、バーコードの有用性を検証した。すべてのバーコードは、ほとんどの種においては1種に対して対応していたことから、同定ツールとしてのバーコードは非常に有用であることが明らかになった。また、近縁種間や、一部の属では高い信頼性の系統樹を得ることができたために、系統樹を用いた分類学的位置の推定の可能性が示唆された。
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