研究概要 |
平成21年度は、脆弱単細胞性海洋プランクトンのうち、長崎県周辺海域で優占度が極めて高い無殻繊毛虫プランクトンに注目し、この生物群の生物相、珪藻に対する摂餌選択性、また、餌環境と個体群動態との関係について重点的に調査を行った。長崎県大村湾の南端に位置する時津港で、月に一回の頻度で採水・固定した海水サンプルを使用し、プランクトンを濾過濃縮、濾紙への接着、鍍銀染色、脱水、透徹、封入の処理を施し永久プレパラートを作成した。その後、生物顕微鏡下で、無殻繊毛虫を可能な限り種のタクソンまで分類し、個体サイズ、食胞内の珪藻、その珪藻の分類やサイズを調査した。また、同時に水柱中の珪藻プランクトンについても分類やサイズを調査した。 無殻繊毛虫プランクトンは、1種(7月)~15種(9月)、25 cels/L(7月)~11400 cells/L(8月)の範囲で出現し、食胞内に珪藻が見られたものが0種(7月)~12種(9月)、O cells/L(3月および7月)~9750 cells/L(8月)であった。食胞内には、球換算直径で5μm以下の珪藻被殻が多く観察され、好まれて摂餌されていることが明らかとなった。また、その組成比は水柱中の珪藻プランクトンにおける組成比よりも高くなる傾向が見られた。水柱中に出現する珪藻の中で、Nizschia sp.,Cheatoceros sp Skeletonema costatumなどの種は無殻繊毛虫に好まれず、Coscinodiscus sp.や羽状目珪藻等のような、突起状の構造を持たず滑らかな輪郭を持つ珪藻が好まれて被食されていた。無殻繊毛虫群集の中では、Strombidium ventropinnumやS.rhynchumの種はいずれの珪藻プランクトンも摂餌せず、一方、Strombidium bilobum,S.epidemum,Strombidium sp.2,Tontonia poopsiaは珪藻を好んで摂餌する種であることが明らかとなった。
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