研究概要 |
平成22年度の研究で次のような成果をあげた.(1)ギリシャアテネ大学Dr.Piperakiの協力によって同国のヒト由来ヒト蟯虫Enterobius(Enterobius)vermicularisの虫卵を入手し,そのmtDNA Cox1塩基配列を解析したところ,全てB型に属することが証明され,東アフリカからヨーロッパにかけてはB型であることが示唆された.(2)約30年前に行なわれた海外在留邦人の健康調査の際の蟯虫検査セロファンの恵与を受け,付着する虫卵からDNAを抽出してmtDNA Cox1塩基配列を解読したところ,ほとんどでA型のヒト蟯虫が維持されていることを見出した.ただし1例は未知の型であった.(3)山口県と奈良県産ニホンザルからEnterobius(Enterobius)macaciを得て(本邦初記録),形態観察とDNA塩基配列分析を行なった.mtDNA Cox1塩基配列による系統解析では,ヒト蟯虫とチンパンジー蟯虫の分岐より古い時代での分岐を示し,霊長類の系統と矛盾しない結果となった(論文準備中).(4)ボルネオ産オランウータン寄生新種蟯虫Pongobius foitovaeを混合寄生しているP.hugotiや他の寄生蠕虫と併せて記載発表した.(5)スリランカ産ハイイロラングールの糞便からEterobius亜属と思われる蟯虫を検出した.(6)ベトナム産マカクの糞便20検体,南アフリカ産ヒヒの糞便約600検体の提供を受け,検査したが,蟯虫類は発見できなかった.
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