研究概要 |
クロダイ属魚類は、広大なインド・西部太平洋において分布し、最も人間に身近で、何処でも漁獲対象となっており、ごくありふれた普通種である。しかし、FAOよりタイ科クロダイ属魚類は分類学的再検討が急務とされている。そこで,一番難しいグループのキチヌ類似種群を中心にまず検討を行った.体節的なモードの異なる計数形質(側線鱗数等)、形態および色彩が非常に似ており、形質の幾つかの組み合わせでないと正確な同定が難しく、いわゆる同胞種(sibling species;Iwatsuki et al.,2006)と判断している。従来有効種とされているA.longispinisとA.latusは遺伝学的解析からミトコンドリア16S領域から概ね5%以上の違いを持つことから、別種と判断した.更に検討すべき6種で,東アジアA.latusのものが変異なのかどうか不明であったので,広くこの海域から集め,分析を行った.その結果,形態・色彩的には概ね区別出来るものの,ミトコンドリア16S領域では,一塩基の変異もなかった.そこで,cytochrome bを分析した.その結果,東アジアでは,大きく3つの集団,あるいは系群があることが判明した.現在結果をとりまとめ中である.6種のうち4種が中近東に、またオーストラリア北西部で2種を確認しているので、それらのものの形態学的違いが地理的変異なのか、亜種レベル以上の違いなのか、更に遺伝学的な結果から結論を下す予定である。
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