中国・雲南省での20カ所以上での野外調査の結果、調査対象とした個体はすべて2倍体であった。しかし花盤の色、実の色、実の形などに形態的変異が非常に大きいことが分かった。沖縄諸島での野外調査の結果、沖縄諸島に分布する個体はほとんど都ヒイラギヤブカラシで、ごくわずかにヤブカラシもあることが分かった。そして、1ヶ所で3倍体のヒイラギヤブカラシを確認することができた。一方、壱岐島、九州北部での野外調査によって沖縄諸島とは別系統のヒイラギヤブカラシが各所に分布することを新たに発見した。これらの調査で収集した個体は染色体観察、花粉稔性調査、そしてDNA塩基配列分析を行った。その結果、中国・雲南省にはさまざまな形態的、遺伝的変異が分布していること、そのごく限られた組み合わせのみが日本に分布していることが分かった。そして日本には、ヒイラギヤブカラシの2倍体に2系統と3倍体が1系統、ヤブカラシの2倍体に1系統と3倍体に1系統の5系統があることが分かった。このようにごく近縁ナ2種においておそらく独立して3倍体が発生しているらしいことがわかってきた。そして、それぞれの地域で少なくとも2種類のゲノムからなる異質3倍体であることが分かった。この異質3倍体は雑種起源である可能性があるが、父性、母性のどちらが2倍のゲノムを供給したのかはまだ分からない。また、ヤブカラシとヒイラギヤブカラシとの分類学的取り扱いが問題となることが分かった。
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