研究概要 |
小胞体Ca^<2+>-ATPaseはリン酸化中間体(EP)の形成と分解を経てCa^<2+>を輸送する。小胞体内腔へのCa^<2+>放出は、膜ドメインの輸送部位にCa^<2+>を閉塞したCa_2E1PからCa^<2+>非結合型のE2Pへの異性化過程でおこる。このとき、細胞質の3ドメイン(A,R,N)のうちAドメインが大きく回転してP-Nドメインと結合し、この変化が膜ドメインに伝わる。筆者は最近、Aドメインと膜貫通ヘリックスM1を結ぶリンカー(Glu^<40>-Ser^<48>)の長さが適切であることが、EPの転換から分解までの各過程に重要であることを示した。特に、Gly挿入でそのリンカーを伸長した変異体ではCa^<2+>放出がブロックされることを示した。これより上記2種のEP中間体の間に、Ca^<2+>を閉塞したCa_2E2Pが存在することを実証、単離することに成功した。今回、1.Ca_2E2Pの結晶構造などの解析を目的として、そのGly挿入変異体にリン酸アナログのBe/Fを結合させ、安定なCa_2E2Pアナログ(Ca_2E2・BeF_<3->)を開発することに成功した。2.K^+非存在下では、E1P-E2P転換に際し、ADP感受性の喪失とCa^<2+>放出が独立に起こりうることを示した。これよりPドメインへのK^+結合の生理的意義を明らかにした。3.P-Nヒンジ領域に存在するアミノ酸側鎖の役割を変異導入により調べ、電荷間相互作用がE1P-E2P転換に重要な役割を持つことを示した。4.Ca^<2+>輸送サイクル各段階において、Aドメインと膜貫通ヘリックスM2を結ぶA/M2-リンカー、およびM2の果たす機能的役割を部位特異的変異導入により調べた。これよりA/M2-リンカーの長さが適切であること、またM2各部の構造が部位特異的に異なる機能を持ち、Ca^<2+>輸送、E2Pの加水分解、Ca^<2+>による非リン酸化酵素の活性化などに重要であることを示した。
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