平成21年度は、前年度に引き続きN結合型糖鎖のプロセシング過程の初発段階に作用するプロセシングα-グルコシダーゼIおよび関連酵素である、大腸菌由来YgjKおよび黒麹菌由来プロセシングα-グルコシダーゼI(AnPGaseI)について、性質の解析および活性中心付近への変異導入を行った。また、並行してN結合型糖鎖がグルコシダーゼ活性に果たす役割の解析を行った。結果は、以下のとおりである。 (1)AnPGaseIの、N結合型糖鎖に対する反応速度論的な解析を行った。その結果、酵素と基質の結合の尺度であるKm値は数μM程度であることを明らかにした。YgjKと立体構造上同じフォールドから成るグルコアミラーゼにおいては、基質に対するKm値は数μM程度であることが知られており、AnPGaseIはKm値がグルコシダーゼとしては例外的に非常に小さい酵素であることを明らかにした。 (2)大腸菌YgjKの活性中心付近に位置すると考えられるアスパルギン酸およびグルダミン酸残基に変異を導入し、これらの変異体は、野生型に比べ活性が大幅に低下することを明らかにした。 (3)グルコシダーゼの一種であるイソプルラナーゼは、活性にN結合型糖鎖が重要である。本酵素の活性中心近傍に存在するN結合型糖鎖付加部位であるAsn448、およびその近傍のTyr440に変異を導入した酵素を構築し、立体構造解析を行ったところ、変異酵素は活性中心近傍のループの立体構造が野生型と異なることを明らかにした。
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