研究概要 |
平成22年度は、糖鎖に作用するグルコシダーゼのうち大腸菌由来グルコシダーゼYgjKを用い、その立体構造情報に基づいた糖の創出を行った。また、糖鎖に作用するグルコシダーゼと密接に関連するエンド-α-1,2-マンノシダーゼと相同性を有するタンパク質の研究について、発現系を構築し性質を明らかにした。この結果、N結合型糖鎖に作用する真核生物由来の酵素と相同性を有する細菌由来のタンパク質が、糖鎖に作用しうること、および、新規なオリゴ糖創出に有用なツールとなりうることを明らかにした。結果の詳細は以下のとおりである。 (1)大腸菌由来グルコシダーゼYgjKにおいて、触媒残基の近傍に位置するアミノ酸残基Asp324をAsnに置換した変異体D324Nを構築した。D324Nとフッ化グルコースおよび様々な糖を反応させたところ、ガラクトース、ラクトース、メリビオースとの反応でオリゴ糖を生成することがわかった。 (2)エンド-α-1,2-マンノシダーゼは、真核生物において糖タンパク質のN-結合型糖鎖に作用する酵素で、プロセシングα-グルコシダーゼIおよびIIによるN結合型糖鎖の刈り込みのバイパス経路を担っている酵素であることが知られている。近年のゲノム解析の進展によりいくつかの細菌においても真核生物のエンド-α-1,2-マンノシダーゼと相同性を有するタンパク質の遺伝子を持つことが明らかになったが、その性質は知られていない。今回、Shewanella amazonensis由来GH99酵素(Sama99)の大腸菌における発現系を構築し、精製酵素の性質を解析したところ、真核生物の酵素と類似の活性を示すが、その基質特異性は低いものであることを明らかにした。
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