研究概要 |
Threonly-tRNA syntheraseの遺伝子を2種類保有するクレン古細菌のAeropyrum pernix (Ap)とSulfolobus tokodaii (St)のうち,Ap-ThrRS-1のX線結晶解析が終了したので、トルコのイスタンブールで開催されたヨーロッパ結晶学会のECM25で発表した。数多くの申込みの中から幸いにもMicrosymposiaのFA1(オーラル発表)に招待され、講演後は世界最先端の結果として大喝采を浴びた。これらの結果を議論した論文が学術雑誌のJ. Mol. Biol.に受理され出版された。2008年度に発表した結晶化の論文で、ThrRS-1とThrRS-2の立体構造の特徴を配列比較から議論したように、通常のThrRSを構成する3個のドメイン(編集、触媒、アンチコドン結合)のうち、Ap-ThrRS-1ではシス型編集ドメインが存在していない。触媒ドメインおよびアンチコドン結合ドメインは大腸菌由来のEc-ThrRSと立体構造がよく似ていて、ThrRS-1は真正細菌由来の遺伝子からできていることが明らかになった。さらにtRNA^<Thr>のアンチコドン認識に必須の保存性アミノ酸残基を見いだすことができた。以上の特徴から、ThrRS-2がトランス型編集の機能を演じていると予測される。しかし、他のトランス型ARSが編集のみの単機能タンパク質であるのに比べると、ThrRS-2はアンチコドン結合ドメインを保持するという新しいタイプのトランス型編集タンパク質であると言える。そのアミノ酸配列の比較からThrRS-2が古細菌由来の遺伝子であること、しかしtRNA^<Thr>のアンチコドン認識に必須の保存性アミノ酸残基が真正細菌型と同じであるという興味ある事実を見いだすことができた。
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