研究概要 |
クレン古細菌が保有する2種類のThrRSのうちThrRS-1の立体構造については論文発表することに成功したので,本年度は残りのThrRS-2に重点をおいて研究を進めた.ThrRS-2およびそのSe誘導体の結晶を得ていたが,さらにThrRS-2のZn誘導体結晶を得ることにも成功した.しかし,いずれの結晶もX線回折データの分解能が低いために構造決定計算では困難を極めた.分解能を向上させるために,タンパク質の発現系および精製過程の見直しを行った.1次構造の比較から,ThrRS-1はバクテリアおよび真核生物と高い相同性を示し,同一サブユニット2個からなる二量体を形成していることを,一方ThrRS-2は古細菌と高い相同性を示すことを見出した.ゲルシフト検定実験によって,ThrRS-2も二量体を形成していることを明らかにし,その立体構造を推定した.さらに,ThrRS-1とThrRS-2は互いに結合して複合体を形成するのではなく,それぞれが独立に存在することを明らかにした.本研究の次のステップのためにtRNAとの複合体形成実験を行い,アシル化前のtRNAはThrRS-2よりもThrRS-1に強く結合し,アシル化後のtRNAをThrRS-2が識別して対応しないアミノ酸を脱アシル化する反応機構を明らかにした.tRNAとThrRS-1あるいはThrRS-2との複合体の結晶化条件を見つけることにも成功した.今後はThrRS-2の構造を決定するとともに,これらtRNAとの複合体結晶の立体構造も明らかにする予定である.
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