アミロイドは各種の前駆体蛋白質が重合した異常な線維であり、細胞外に蓄積し難治性疾患であるアミロイド症の原因となる。各種アミロイド線維、特にβ2-ミクログロブリン(β2-m)アミロイド(透析アミロイド)およびアルツハイマー病βアミロイド(Aβ)に焦点を当て、(1)生体内環境を模倣した試験管内線維形成系モデルを構築し、生体内での線維形成機構を解明する。(2)細胞外の生体環境における蛋白質品質管理機構を解析し、それがアミロイド前駆蛋白質の凝集の予防・促進にどのような効果を及ぼしているのかを解明する。(3)これらの解析によりモデルを作成し、アミロイド症の治療法の開発を試みることを目標とする。本年度は透析アミロイド症の原因物質であるβ2-mアミロイド線維を試験管内で伸長させることが示された遊離脂肪酸が、生体内でも線維伸長効果を示し得るか検討した。脂肪酸は生体中ではアルブミンに結合して輸送されるが、アルブミンの結合容量を超えると線維を伸長させる。従って、アルブミン非結合型遊離脂肪酸に線維伸長活性があることが示された。血漿中非結合型遊離脂肪酸については解析が難しく、直接の結果は得られていないが、透析時に用いるヘパリンによる遊離脂肪酸の増加などにより、非結合型遊離脂肪酸の濃度が増加し線維形成を促進し、長期間の人工透析の継続によりアミロイドが蓄積する可能性がある。また、線維伸長効率の高いリノール酸などの不飽和遊離脂肪酸は、酸化されると線維伸長活性が低下するが、生体中での酸化型不飽和遊離脂肪酸の割合は僅かである。従って、不飽和遊離脂肪酸も線維形成促進に寄与している可能性がある。
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