研究概要 |
Musashi1が持つ二つのRNA結合ドメイン(RBD12)と標的RNAとの複合体のNMR構造解析に向けて、試料調製と条件検討を行った.まず、長さの異なるRNAを調製し、10-及び15-merの標的RNAを選出した.これらを用いてNMR滴定実験を行ったところ、いずれのRNAも、加える量がRBD12に対して1〜2等量では沈殿の量が少なく、良好なスペクトルが得られることがわかった.これを受けて、RNAとRBD12の量比が1:0,1:1,1:2におけるX線小角散乱(SAXS)を行った.その結果、いずれのRNAについても、RBD12と等量で混合したときは一つのRBD12に対して一つのRNAが結合し、2倍量のときはオリゴメライズすることが示唆された.以上を踏まえて次の準備を行った:[15N,13C]標識化RBD12と標的RNA(10-または15-mer)を等量混合して複合体を形成させた;逆に、[15N,13C]標識化した標的RNA10merを調製し、非標識RBD12と複合体を形成させた;また、RBD12について3種類の変異体を作製し、それぞれに常磁性中心を導入した.他方、PABPとMusashi1の相互作用解析については、以下のことを行った.Musashi1との結合領域を含むPABP RBD1の発現系を構築し、安定同位体標識化試料の調製方法を確立した.さらに、NMR立体構造解析に着手し、PABP RBD1単体の溶液構造をほぼ決定した.また、Musashil RBD12のC末端側に隣接したPABP結合領域を含む複数のコンストラクトを作製した.これらを用いたプルダウン・アッセイによりPABP RBD1に結合するものが得られた.以上のように、Musashi1と標的RNA、Musashi1とPABPの相互作用及び立体構造の解析に向けての礎を築くことが出来た.
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