1. 研究の目的 本研究は、我々が発見したC-マンノシル(C-Man)化ペプチドによるリポポリサッカライド(LPS)シグナルの増強制御の知見をもとに、マクロファージ細胞株における自然免疫系シグナル伝達に対するC-Man化ペプチドの作用機構を明らかにすることを目的とする。 2. 研究実施内容 これまでの研究で、化学合成したC-Man化ペプチド(最小必須構造C-Man-Trp-Ser-Pro)が、マクロファージ様RAW264.7細胞において、LPSシグナル伝達経路を増強することを見出した。また、C-Man化ペプチドの結合分子としてHeat Shock cognate protein 70(Hsc70)を同定し、Hsc70のC-Man化ペプチドに対する結合性に関する解析を行った。本年度は、C-Man化ペプチドとHsc70の結合が自然免疫シグナルにおいて果たす意義を明らかにするため、その細胞シグナルへの影響について生化学的な解析を進めた。 3. 研究結果 RAW264.7細胞に精製したHsc70を添加することにより、c-Jun Kinase(JNK)シグナル経路を介してTumor necrosis factor(TNF)-αの産生が促進した。このHsc70誘導性の細胞シグナルに対して、C-Man化ペプチドは、コントロールペプチドに比べてそのシグナルを増強し、TNF-αについてもさらに産生を促進した。シグナル阻害剤を用いた生化学的解析から、JNKの上流のMAPKKKであるTGF-β activated kinase(TAK)1の活性化が、Hsc70によるTNF-α産生に重要であること、そしてこのTAK1のリン酸化をC-Man化ペプチドが初期から促進することが明らかとなった。上記より、C-Man化ペプチドとHsc70の結合が関わる、自然免疫シグナル経路の新たな制御機構の一端が明らかとなった。
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