研究概要 |
1.ヘパリン結合性因子とその関連分子のヘパラン硫酸の硫酸化パターンによる活性制御機構:(1)ヘパラン硫酸6-硫酸転移酵素(HS6ST)-1,-2のダブルノックアウトマウス胚由来の線維芽細胞(dKO-NEF)を用いて、3種類のFGF(-1,-2,-4)活性に及ぼすヘパラン硫酸(HS)の硫酸化パターンの影響を調べた。FGF-1と-4活性は6-硫酸基の影響を強く受け、シグナル伝達及び細胞増殖は強く阻害された。その阻害機序として、FGF-1,-4は6-硫酸基を欠損するHSとの結合性が目立って減少し、シグナル伝達複合体であるFGFレセプター/FGF/HSの形成も著しく減少することを示した。(2)血管形成因子の1つであるFGF-2活性をより特異的に阻害するHS関連化合物を調べた。その結果、HSの2-硫酸残基を持ち6-硫酸基を欠損する8糖はFGF-2のシグナル伝達を特異的に阻害するが、FGF-4の活性には影響なかった。FGF-4は2-硫酸残基、6-硫酸残基両方をもつ8糖によって阻害された。それぞれのFGFに対して結合能がある8糖が内在性のHSとFGFの結合を拮抗阻害した。注目することは、結合性HSを欠く細胞に対してはこれら8糖は影響しないか、阻害的であった。この点、内在性HSの構造、量によって促進効果、抑制効果を示すヘパリンとは異なる。特異なヘパリン結合因子の活性はその因子には結合できるがシグナル伝達の複合体を形成できないようなサイズのオリゴ糖によって阻害できる可能性を示唆した。 2.肺胞形成因子の1つであるBMP4の代謝にHSは関与するか:正常な肺形成でFGF10に誘導されるBMP4は速やかに代謝される。BMP4が蓄積したままでは枝分かれ構造が減少する。ヒト由来の肺上皮細胞株を入手して、ヘパラン硫酸合成関連遺伝子の発現レベル、ヘパラン硫酸の構造など基礎的な情報を調べた。これに基づいて、細胞のヘパラン硫酸を除去、ヘパラン硫酸を低硫酸化、高発現しているHS6STにたいするshRNA処理した場合、 HS6STs, HS2STノックアウトマウスからHSの特異的な硫酸化を阻害された肺上皮において、 BMP代謝への影響を調べる予定である。
|