研究概要 |
1)線維芽細胞増殖因子(FGF)-2はヘパラン硫酸(HS)の2-O-硫酸基に強い結合性を示すことが私たちを含めてこれまでの研究から明らかにされた。今回は異なる硫酸化パターンを持つオリゴ糖のFGF活性に対する影響を明らかにした。FGF-2依存的なシグナル伝達は2-O-硫酸基を持つが6-O-硫酸基を欠損するようなHS-8糖によって強く阻害されるが、FGF-4依存的なシグナル伝達は阻害されなかった。FGF-4のシグナル伝達の阻害には2-O-と6-O-硫酸基の両方をもつHS-8糖が必要であった。これらの結果は異なる硫酸化パターンをもつHS-8糖が特定のFGF活性を制御できる可能性を示唆した(Glycobiology(2009)19, 644-654)。2)肢芽形成にはFGF-8,-10をはじめ多くのヘパリン結合性細胞増殖因子、形態形成因子が作用する。ニワトリ胚肢芽領域にHS6-O-硫酸転移酵素(HS6ST)-1,-2に特異的なRNAiを接種すると遺伝子発現が抑えられ酵素の基質特異性を反映したHSの6-O-硫酸基の減少を引き起こした。HS6ST-2 RNAi処理はHS6ST-1 RNAi処理より高頻度で肢芽の成長を阻害した。これら結果はHSの6-O-硫酸化レベルと正確なO-硫酸化パターンがニワトリ肢芽の形成に重要な役割を持つことを支持する(Dev.Growth Differ.(2010)52, 146-156。3)Esko博士ら(U.S.A.)との協同研究から以下のことを明らかにした。HS2-O-硫酸転移酵素(HS2ST)ノックアウトマウスはトリグリセライドが血漿に蓄積し、キロミクロンや投与したVLDLの排除が遅れた。培養肝細胞へのVLDLの取り込みはN-硫酸基や2-O-硫酸基を欠損するヘパリンによって阻害されないが6-O-硫酸基を欠くヘパリンによってヘパリンと同程度に阻害された。これらの結果はヘパラン硫酸の2-O-硫酸基がこれら分子の肝細胞への取り込みに必要であることを示した(J.Biol.Chem.(2010)285, 286-294)。
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