研究概要 |
肺胞の形には様々なプロテアーゼが関与していることが知られている。肺にはマスト細胞が多く存在し、高濃度のプロテアーゼ(MCPs)やコラゲナーゼなどを合成し、それらのいくつかはヘパリンと結合して顆粒内に保持され外部からの刺激に応じて遊離される。マスト細胞のプロテーゼ活性の調節におけるヘパリン構造との特異性に注目して調べた。異なった特異性を持つヘパラン硫酸硫酸転移酵素(HSST)を欠損したHS6ST1-KO, HS6ST2-KO, HS2ST-KOマウスとHS6ST-1,-2ダブルノックアウトマウス胎仔皮膚からマスト細胞を培養し、結合識型マスト細胞(CTMC)を得た。HS2ST-KOからのCTMCは完全に2-硫酸化を欠損したヘパリンを合成した。マスト細胞特異的な3種類のプロテアーゼ(トリプターゼ、カイマーゼ、カルボキシペプチダーゼA)活性は野生型(WT)マウスのCTMCに比較していずれも減少した。特にトリプターゼは1/20以下へ激減しトリプターゼタンパク量も激減していたが、そのmRNAの発現レベルはほとんど変わらなかった。カイマーゼも同様な傾向を示した。これらの結果はヘパリンの2-硫酸化もHS2STによって合成されること、これらマスト細胞プロテアーゼの顆粒内保持には要求程度には違いがあるがヘパリンの2-硫酸残基が関わった。HS6ST1-KO, HS6ST2-KO, HS6ST-1,-2ダブルノックアウトからのCTMCについて同様に解析した。その結果、ヘパリンの6-硫酸化はHS6ST1とHS6ST2によって合成されることが明らかになった。HS6ST-1,-2ダブルノックアウトからのCTMCのトリプターゼ、カルボキシペプチダーゼAは激減し、カイマーゼは半減したが、それぞれのmRNAの発現はWTマウスと比較してほとんど変化しなかった。従って、トリプターゼ、カルボキシペプチダーゼAの顆粒内保持にはヘパリンの6-硫酸化が要求される。これら4種類のノックアウトマウス由来のCTMCの結果をまとめるとマスト細胞特異的なプロテアーゼ群とヘパリンとの相互作用はそれぞれ異なることを示唆し、トリプターゼの保持にはヘパリンの2硫酸残基と6-硫酸残基の両方が必要であることを示した。
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