SARSコロナウイルスのポリタンパク質からは各種酵素群がプロセシングにより切り出されてきて機能をもつようになる。このプロセシングに関わるプロテアーゼは2種類存在するが(PL2と3CL)、プロセシング反応のほとんどを担っているのは3CLプロテアーゼの方である。これら2種のプロテアーゼもポリタンパク質の一部として合成され、それぞれ自体の活性によりポリタンパク質から切り出されてくる。本研究は、3CLプロテアーゼの自己プロセシングのメカニズムを明らかにすることを目的としたもので、前年度までに自己プロセシング中間体としてのプロ体(プロテアーゼ活性中心のシステインはアラニンに置換。C末端側にプロ配列を有しているもの。)のX線結晶構造解析を行うとともに、試験管内自己プロセシング反応系の構築を行ってきた。これらより、3CL、プロテアーゼの自己プロセシング反応における切断箇所の認識メカニズムは、成熟型の3CL、プロテアーゼがポリタンパク質中の他の切断箇所を認識するメカニズムと異なるものであり、したがって、基質特異性も異なっている可能性を見出した。今年度は、さらに多数の切断箇所の前後のアミノ酸残基置換を行い、通常のプロセシング反応では基質認識に用いられていない部位が自己プロセシングの際には認識されていることを確認した。前述の自己プロセシング中間体のX線結晶構造ではこの部位を認識するポケットが確認された。
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